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マンションで大切な滑り止め対策のポイントを場所別に解説!

2023.08.04

かつてはマンションのエントランスや階段で転倒したとしても、本人の不注意で済まされていましたが、近年では管理者の責任を問われるケースも増えています。そのため、共用部分に適切な滑り止め対策を行うことが重要です。
本記事では、マンションでの滑り対策が必要な理由や対策が必要な場所、対策の方法などについて説明します。

マンションで滑り止め対策が必要な理由

マンションで大切な滑り止め対策のポイントを場所別に解説!

まず、マンションで滑り止め対策が必要な理由について説明します。廊下などでの転倒や階段などからの転落による死者は、火災による死者よりもはるかに多いことをご存じでしょうか。

2017年の統計資料によると、マンションを含む建物内やその周辺での死者のうち、転倒によるものは2,246人、転落によるものは526人でした。一方で火災によるものは692人、交通事故による死者は4,360人です。[注1]

かつては、マンションの共用部分で転倒しても、本人の不注意で済まされていました。しかし、最近では管理者の責任が問われることも多くなっています。たとえば、高齢女性が駅ビルの通路を歩行中、通路に付着した油に滑って転倒し負傷した事件では、ビル所有者の責任が認められ、約2,200万円の損害賠償の支払いを命じる判決が平成13年に下されています。[注2]

一方で、スーパーマーケット店内の床面が濡れていたため客が転倒、負傷した事件では、損害賠償請求を棄却する判決が平成22年に下されました。[注3]

スーパーマーケットの事件で損害賠償請求が棄却されたのは、同店の床面に滑り止め加工がされており、滑り抵抗値が国の定める推奨値以上だったことが要因の一つとして挙げられます。

滑り抵抗値とはCSR(Coefficient of Slip Resistance)とも呼ばれ「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準:国土交通省策定」によって定められた数値です。マンションの共用部分ではCSRは0.4以上が推奨とされています。[注4]

[注1] 国土交通省 国土技術政策総合研究所「安全・安心なマンションのために」
https://www.chintai.or.jp/common/img/pdf/20210617tenraku-2.pdf

[注2]東京地方裁判所判決:平成12年(ワ)第2052号
https://www.nonslip.jp/date/pdf/h20011127.pdf

[注3] 名古屋地方裁判所岡崎市部判決 平成21年(ワ)第850号
https://www.nonslip.jp/date/pdf/h20101222.pdf

[注4]防滑テクニカルサポート 滑り抵抗係数(CSR:Coefficient of Slip Resistance)の基礎知識
https://www.nonslip.jp/csr/about/

マンションの共用部分で滑り止め対策が必要な場所

次に、マンションの共用部分で滑り止め対策が必要な場所について説明します。

エントランス

エントランスでは、傘や雨合羽など雨具をしまう際の水が床にたまってしまいます。また傘を持っていない人が雨に降られて駆け込んでくることもあり、駆け込んできた拍子に滑りやすくなっているエントランスで転倒してしまう危険性もあります。

また、エントランスは床面がタイルや大理石で作られていることも多いでしょう。タイルや大理石は水に濡れると非常に滑りやすくなってしまうのが特徴です。このようにエントランスは雨が降った場合、とくに滑りやすくなってしまうため、対策が必要といえます。

階段・廊下

マンションの階段や廊下は屋外に設置されていることが多く、少しの雨ですぐに濡れてしまいます。また冬場は、雪や凍結により、さらに滑りやすくなってしまうことも。さらに床材がコンクリートの場合、経年摩耗で滑りやすくなってしまうこともあります。

このほかに、マンションによっては階段や廊下自体が狭く、段差が急なものもしばしば見られます。重い荷物を持った状態でこうした階段を利用するとバランスを崩してしまいがちです。

また、廊下にはマンホールがある場合も要注意です。マンホールは金属製のため、非常に滑りやすくなります。階段や廊下も滑り止め対策が必要でしょう。

滑り止め対策の方法

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それでは、滑り止め対策には具体的にどのような方法があるのでしょうか。3つの方法を説明します。

滑り止めテープ

一番簡単にできる対策が滑り止めテープです。ホームセンターなどで販売されていますし、ネットでも購入可能です。安くて手軽なのがメリットです。

一方で汚れが目立つことや耐久性に乏しいことがデメリットといえます。また、テープのため、広い面積の滑り止め対策には向いていません。階段などの一時的な対策として使うのがおすすめです。

溶剤工法

溶剤工法は、特殊な液剤により床材の表面に微小な凹部を作り、水の表面張力を利用した吸盤効果を発生させることで滑り止めを実現します。施工前と見た目がほとんど変わらないのがメリットです。効果が長期間持続することや施工が大掛かりにならないこと、適用床材が多いことも特徴です。

ただし、汚れやワックスなどを使うと滑り止め効果が減少してしまうため、メンテナンスで気をつけなければならないのがデメリットです。

コーティング

コーティングには大きく分けて、塗料自体に滑り止め効果があるものと、塗料に滑り止めの骨材を混合して塗装することで滑り止めにするものがあります。

塗料がクリア系だと、施工前と見た目があまり変わりません。適用できる床材が多いのがメリットです。デメリットは定期的なコーティングが必要なことです。

バーナー加工

バーナーで床の表面を焼いて凹凸をつける工法です。長期間効果が続くことがメリットです。

ただし、バーナーで焼くため、表面の色やツヤが変わったり、もろくなったりする可能性があります。また、適用できる材質が自然石に限られるほか、施工が大掛かりになるのもデメリットです。

サンドブラスト加工

床の表面に混合砂を高圧噴射して、表面に凹凸をつける工法です。元の床材の色合いは変化しない点がメリットといえるでしょう。

デメリットは凸凹面に水垢などが付着しやすく、汚れが目立つことです。適用できる床材がタイル・大理石に限られているのも弱点です。

ノンスリップ金物

階段の角部に滑り止めの金物を取り付けることで、スリップを防止します。角の破損・摩耗防止にも効果的です。床材や場所に応じたさまざまな種類の金物が用意されています。

滑り止め対策をする際の注意点

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滑り止め対策をする際に注意するべき点を2点説明します。

DIYでは限界がある

滑り止め対策の方法で少し説明したように、滑り止めテープ程度ならDIYでも可能です。しかし、マンションの滑り止め加工は、また万が一の訴訟リスクに備える意味もあるはずです。その場合、きちんとCSRがわかるような施工をしないと意味がありません。
DIYは応急的な処置にとどめて、しっかりとした対策は専門業者に依頼した方が無難でしょう。

マンションの共用部分にはしっかりと滑り止め対策を行おう

マンションで大切な滑り止め対策のポイントを場所別に解説!

マンションで滑り止め対策をしていない場合、マンションに出入りする人が転倒して損害賠償請求を起こされる可能性があります。また、訴訟までは起こされなくても、細かなところに配慮されていないマンションだとみなされてしまい、入居者が増えない可能性もあります。

白水興産株式会社では、階段用の滑り止めとして「アルミ製・ステンレス製のノンスリップ」を提供しています。階段の角部に設置することで、スリップによる転落事故を防止できます。また、階段の角を欠けや摩耗から守る役割もあります。さまざまなサイズの階段に対応できますし、カラーバリエーションも豊富です。階段の滑り止め対策を考えている方は、ぜひ一度検討してみてください。